これはパリ在住40数年の孤高の画家早川俊二の軌跡である。
早川俊二は日本のあらゆる団体展に属さず、パリで途方もない時間をかけて自分の世界を一歩一歩確立してきた。
24歳で渡仏し、西洋の巨匠たちの絵画の質と量に打ちのめされて以来、デッサンを学び直すことを決意し、7年間もの月日に来る日も来る日もひたすらデッサンを追求する。
そして20数年もの時をかけて独自の絵の具を生み出す。
早川の目指す地平線は西洋と東洋の融合……それはあるときはミケランジェロのデッサンの世界、またあるときは長谷川等伯の松林図屏風のような空間表現。
その恐るべき射程距離を「稀有な/驚異の/比類のない/空前絶後な」人、と読売新聞編集委員の芥川喜好氏は表現した。
そしていく層ものマチエールを重ね、やっとあの強靭な画面を生み出した。その異空間の中で、たおやかな女性たちは内なる光を放ちながら、私たちに穏やかな至福の時間を与えてくれる。
何十年もの気が遠くなるような確固な歩みを経て早川が生み出した……あの早川ホワイトとでも名付けようか……茶碗の白の仄かな温もり。アフリカの壺がそこに存在する空気感を我々は受けとめる。
そこには画家の美の普遍性を求める純粋な芸術精神が感じられるのだ。そのためには膨大な一人の時間が必要であり、パリで孤高の画家になるしかなかったのだ。
さあ、今こそ早川絵画の遥かな旅に飛び立とう!
文・馬場邦子
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